表面処理鋼板のバリ取りについて
板金製品のバリ取りを検討しておられる、板金業の皆様が、まず心配される事は表面処理鋼板のバリ取りを行うと、表面処理が剥離してしまうという事ではないでしょうか?
バリが取れるのだから、表面処理だって取れてしまうはずだ!
という御心配は当然の事です。
しかし、実際は、そのような心配はありません。 バリ取りのブラシは、製品から突出したバリには強く叩くように当たりますが、表面処理が施してある表面には、サンドペーパーの片側がフリーの為、極めて緩くしか当たらない のです。

しかし、これはあくまで理屈です。理屈倒れの恐れだってあります。私達は、実際にそうなのかは試してみなければ解らない と考えました。
論より証拠
そのような、お客様の心配事を払拭するために、オーセンテックは下記のようなサンプル実験を行いました。
ばり取り前とばり取り後におけるめっき鋼板の表面処理品質調査結果
試験事業者:株式会社ニッテクリサーチ
1.目的
めっき鋼板のFE-SEM/EDX分析を実施し、めっき層の厚み、組成を把握する。
2.供試試料
バリ取り前 ばり取り後 A ばり取り後 B (計3検体)
3.調査項目及び調査方法
3.1 断面SEM観察
- 試料調製:各サンプルを切断、埋め込み研磨し、断面を観察した。
- 試験装置:日本電子製 JSM-7000F
- 観察倍率:×10000
3.2 EDX分析
4.試験結果
4.1 断面SEM観察
別添の「SEM観察撮影」を参照。
4.2 EDX分析
下記のEDX分析結果及び別添のEDXチャートを参照。

図1. SEM観察撮影 バリ取り前 × 10000

図2. SEM観察撮影 A × 10000

図3. SEM観察撮影 B × 10000
考察:図1に示すバリ取り前の表面処理部の厚さは、ばり取り後A、Bでも、ほとんど変化していない事が解る。


考察:化学的な変化が起こっていない事を確認するためのEDX分析でも、変化が無い事が確認された。
追加実験『塩水噴霧試験』
上記によって、バリ取り後の表面処理鋼板の物理的な状態が、 バリ取り前の状態と、ほぼ同等であるという事が解ります。しかし、それでも、実際に“錆びが来ない"事を確認するまでは安心できない、という御意見にもお答えし、さらに、同一の製品に対し『塩水噴霧試験』を行いました。下記にその結果も公開します。
1.目的
めっき鋼板の塩水噴霧試験を実施し、その性状把握に資する。
2.供試試料
バリ取り前 バリ取り後(計2検体)
3.調査項目及び調査方法
3.1 塩水噴霧試験
- 試験規格: JIS Z2371 準拠
- 試験機 : スガ試験機製 、 CA90L
- 試料調整: 試験片の端面をシールし試験を実施した。
- 試験条件: ・試験時間- 72時間
- 雰囲気温度- 35 ± 2℃
- 塩水濃度- 5 ± 0.5%
- pH調整- 6.5 ~ 7.2
- 使用水- イオン交換水
- 噴霧圧力- 0.098 ± 0.01Mpa
評価方法:写真撮影- 試験前、24h、36h、48h、60h、72hで写真撮影
4.試験結果
4.1 塩水噴霧試験
下記の「外観写真撮影」を参照
塩水噴霧48時間で、バリ取り前、バリ取り後ともに評価面から白錆の発生が確認された。
赤錆については塩水噴霧72時間完了時点で発生は確認されなかった。

まとめ
表面処理鋼板のバリ取りを行い、試験片を作成、SEM分析と塩水噴霧試験を実施しました。SEM分析においては、表面処理部分の欠落は、ほぼ確認できませんでした。 塩水噴霧試験においては、極めて過酷な72hレベルでも、遜色が認められませんでした。
これらの実験により、AuDeBuは、表面処理鋼板の被膜に影響を与える事無く、バリ取りを行えるという事が実証されました。
このバリ取り性能を実現したブラシのコンテンツはこちらです。
解説ページ:表面処理鋼板とは