バリ取り・R面取りの自動化の進め方
作業者が行っているバリ取り作業を観察すると、視覚・触角センサを組み込んだ 万能ロボットがあらゆる種類のバリや部品形状・寸法に追従してバリ取り・R面取り を行っているようなものである事に気が付きます。
どのような部品に対しても、作業者は、バリの寸法・形状や生成位置に臨機応変に対応し、 バリ取り・R面取りと検査を同時に行っています。 これらを機械で再現するのが極めて困難である事は容易に想像できます。
また、弊社を含む、バリ取り・R面取りの合理化や自動化について装置メーカーに相談を持ち掛けても、装置メーカの得意とする専門分野の返事が多く、必ずしも期待した返答を返してくれるとは限りません。
その理由は、あまりにも、この分野のニーズが多岐に渡っているからであり、1つのニーズで構築されたシステムが、他では流用できない事があまりにも多いからです。
そのような困難な状況の中、このページではバリ取り・R面取りの自動化の一般的なアプローチ について述べ、その課題をうまく解決できる方策を考察したいと思います。
バリ取り作業の合理化に対するフローチャート
バリ取り作業の合理化を進めるときのフローチャートを示し、このフローに従って技術的なポイントを述べます。
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バリ取り作業の自動化計画推進のフローチャート |
バリ取り・エッジ仕上げのシステム化
バリ情報の収集
バリ取り・R面取り作業の自動化を計画する場合に、まず最初に行うことは部品から得られるバリ情報の全てを集めることです。
パリ情報の主なものは、
- 設計部門から得られる図面
- バリ取り理由
- エッジ品質
- バリの種類
- バリ生成箇所
- バリの形状・寸法
- パリ取り・エッジ仕上工程などです。
自動化または作業改善の選択
パリ取り・R面取りの合理化計画では、現在の作業工程をどの程度にまで どのように改善したいのかを明確にすることが必要です。
計画段階では次のような要望がよくあります
- 作業員数を減らしたい
- バリ取り・R面取り工程をライン化したい
- バリ取り・R面取り工程を自動化・無人化したい
- 工数を減少させたい
- エッジ品質を向上したい
これらのいずれもが自動化の対象になるので、装置価格、エッジ品質、コストダウン等の トータルコストを検討して投資に踏み切ることが重要となります。
一般に、部品の種類と生産量によって自動化できる範囲を示すと図のようになります。 手作業によるパリ取り・R面取りは多品種少量生産に使われ、量産に対してはバリ取り専用機が用いられます。
ロボットによるバリ取りは手作業と専用機の中間に位置します。
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部品の種類と生産量への対応 |
部品の品質と生産量によってバリ取り・R面取りの自動化を効果的に進め ることができる範囲が存在します。 部品の生産性は単位時間当りの生産数、部品の品質は寸法精度や形状精度です。
部品の生産量が多く、品質レペルが高いのものが要求される生産形態があります。
一方では、部品生産量が少なく、部品の品質レベルの低い生産形態もあります。
図8.6(b)では、部品の品質と生産量によってR面取りや表面仕上げの 機械加工が必要な領域と手作業が必要な領域に分けることができます。機械加工領域ではA領域、C領域、手作業領域はB領域、D領域となります。
- C領域で部品の品質の要求を満たすためには、高度の熟練技能が必要になります。
- D領域における仕上げ作業では作類環境の要求に応じて、機械加工への転換をおこなう事になります。
- B領域での手作業のために作業工程に比例して作業コストが増大します。
これを改善して低コストで生産するために機械加工が導入されます。
バリ取り・R面取り方法の選択
バリ取り・R面取りには、5種類ほどのの加工方法があります。 いずれの方法を適用するかこついては、次の3段階の方法によつて選定すべきです。
- 各加工方法の能力を熟知して、大まかに机上選定する。
- テスト加工を行って、その結果を元に絞り込む。
- 絞り込んだ加工方法に対して自動化の容易性や投資額を算定した評価を行った上で決定する。
パリ取り・R面取りに適用できる加工方法の能力についてはすでに多くのデ ータがあるので、それらを大いに活用する必要があります。
テスト加工は担当者が最も重要と位置付けるもので、それによって得た結果を十分に分析して評価すべきでしょう。
表は、その際に用いる評価表の一例を示しています。評価は点数や○△×などの記号で行い、評価項目は重要で項目として取り上げる内容や、その重み付けも重要です。

表 バリ取り・R面取り法を選ぶ場合の評価表
(1)バリ取り・R面取りの加工面から考慮すること
- バリが完全に除去されて、設計に要求されるエッジ品質が得られ、部品がそ の機能を果たすことができるか。
- エッジ品質の評価方法、すなわち測定方法はテスト加工だけでなく実際の現 場でも使うことができるか。
- バリ取り・R面取り加工による二次的効果を明確にする。
- 形状、精度や寸法精度への変化、あるとすればどれくらいか
- 部品の寸法、表面の粗さ、平面度、平行度、真直度、真円度、
- 部品の変形、打痕の発生、残 留応力などはどの程度許容されるのか。
(2)自動化の観点から考慮すること
- タクトタイムは満足できるか。
- 部品搬送はどのようにするのか。自動化か手作業によるか。
- 部品のハンドリングによって打痕や変形を与えることがないか。
(3)コストの観点から考慮すること
- 設備投資額を満足できるか。
- ランニングコストやメインテナンスコストはどのくらいになるか。
このように考慮するべき項目が多くあり、いずれの方法も目標条件を完全にクリ アできない場合もあり得ます。そのような場合には、複数の方法を平行してさらに検討を進める か専門家の意見を聞くことをお薦めします。
バリ取り・R面取りを自動化する場合には、次のような組合せがあります。
- 汎用装趾でパリ取り・R面取りを行い、搬送・洗浄工程を加える
- 汎用工具でバリ取りを行い、搬送・洗浄装趾に組込む
- パリ取り・R面取り用工具を設計し、搬送・洗浄装置に組込む
バリ取り・R面取り装置の設計・製作と搬送・洗浄までを含めたシステム設計は、バリ取リ・R面取り法が主体か、般送方法が主体であるかによってそのアプロー チが異なります。
加工方法自体ならば、バリ取り装置メーカに直接依頼することになります。搬送方法主体ならぱ、自社設計か搬送を得意とするメーカに依頼します。汎用装置を用いる場合にはバリ取り条件を求め、これに搬送・洗浄工程を追加 して設計します。
汎用工具や専用工具を用いてバリ取り・R面取りを行うときには担当技術者がバリ取りテストを行い、システムの仕様を決定してから専用機設計 部門や導用機メーカに依頼することになります。
ロボットを利用する時には、ロボットをバリ取りに用いる場合と搬送のみに用いる場合があります。いずれもロボットの応用技術設計ができるメーカヘ依頼することに なります。
この装置の仕様を決める場合に次のような内容を検討しなければなりません。
1.部品の材質
軟質材料の場合にはパリ生成箇所にだけ工具を当てて他の表面には傷が付かないような方法を用います。
2.部品形状
軸対称部品の場合には軸の周りに部品を回転させることが良いです。非対称部品の場合には、ならい装置を用いてバリの生成箇所にバリ取り・R面取り工具を追従 させるのが良いです。
3.部品の加工精度
加工精度の高い部品にはバリ生成箇所にバリ取り工具を接触させる方が好ましいです。また、部品相互の衝突による打痕防止やマテハンによる変形防止に対しても十分な配慮が必要です。
4.バリの大きさと均一性
バリの大きさが不均一な場合には大きなバリを強制切込みによって除去し、次に噴射加工法やブラシ仕上法またはパレル研磨法を用いる2段階工程が用いられます。
5.洗浄工程
ブラシ仕上法、パフ研磨法を用いるとバフかすや、バリくずが部品に付着します。 これら二次効果の除去を行うために洗浄工程が必要になります。
6.ロボットの利用
ロボットを利用してバリ取り・R面取りを行う場合には次のような課題解決が必要となります。
- ロボットハンドに持たせることができる工作物重量によってバリ取り 工具を持たせるか部品を持たせるかを決定する。
- 部品の形状誤差や部品をチャッキングしたときに発生する娯差を考慮 にいれて、バリ取り工具または部品チャック冶具に「逃がし」を入れる
- 部品のバリ発生箇所である外径形状に高精度追従させるカセンサを導入するか、ばねや空気圧を用いた自己ならい方式を採用するかを検討する。カセンサ方式は設備投資額が高いので、その投資 効果などの十分な検討が必要になる。