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「糸面取り C面取り R面取り」

糸面取り C面取り R面取り


金属製品のエッジの仕上げ方法は、JISの普通寸法公差他資料の中の機械加工部品のエッジ品質及びその等級(JISB0721-2004)に記載されています。 ですが、これらは機械加工品におけるエッジ仕上げの規格です。  機械加工(つまり切削加工)は、金属の塊をしっかりとチャッキング(固定)し、少しずつ削る加工方法であるために、製品のエッジに対しても高精度の加工が可能です。  これに対して、板金加工(塑性加工)の場合は、主に、金型を用いて形状を鋼板に転写する事で行われるために、別途加工工程を設けない限り、精密なエッジ仕上げを行う事が出来ません。 

もう少し解り易く言いますと、あなたが、芸術家で彫塑を作っているとしましょう。  彫像を彫刻刀で削って作る時、ついでに尖った部分を削っておく事は簡単です。  しかし、塑像と言って、はさみで切ったり、曲げたり、ねじったりして、作った作品は、ついでに尖った部分を削っておく事は出来ないので、後で、削るという作業を別途おこなわねばなりません。

芸術の世界では、彫像と塑像では、彫像(彫刻)の方が多いと思いますが、私達の周りにある金属製品に於いては、圧倒的に塑像(塑性加工で生産された製品)が多いのです。  例えば、道路を歩いている時に見える電信柱の金具や信号機などの金属製品も、全部、板金加工(塑性加工)で生産された製品で、切削加工された金属製品は1つもないというのが普通です。

何故、こんなに板金加工(塑性加工)で作られた金属製品が多いのかと言うと、圧倒的に生産性が高い、つまり短時間で大量に作る事が出来て、おまけに、削りカスが出ないからです。

板金製品の例としては、実に様々なものがありますが、鉄で出来た、ディスクトップ・パソコンのボディや内部の骨組みが典型的で解り易い板金製品の例です。

上に述べた、金属製品のエッジの仕上げ方法は、詳細な規格が設けられていますが、実はこれらは、板金製品用の規格ではありません。

筆者は、JISB0721-2004に従った板金製品のエッジ仕上げの指定を、見た事がありません。  このような詳細な指定を行えば、生産者側は、塑性加工製品を機械加工(切削加工)してからでなければ、出荷出来なくなってしまうからです。  一般に、塑性加工製品は機械加工製品よりも、圧倒的に安価で、生産時間も極端に短いのです。  コストだけを考えても、2倍以上に跳ね上がってしまう事になります。

では、圧倒的に生産量が多い、板金製品のエッジの仕上げ方法とは、どんなものなのでしょうか?

板金図面には、文字で下記のように記載されています。



具体的な、寸法の規定は無く、かなり大ざっぱである事に驚かれた方も多いと思います。  ですが、このうちのどれかが図面に記入されただけで、板金製品の生産速度は、いきなり半分に低下すると言っても過言ではありません。  生産速度が半分という事は、生産コストは2倍という事でもあります。

設計者と板金屋さんの事だけを考えると、安易に上記の4つのうち何れかの指定を図面に書き込むのは、絶対に避けたいところです。  しかし、そうは言っていられない事情が、昨今、どんどん増えて来たのです。  この増えて来た事情については、別途詳細に述べますが、ここでは、これの4種類のエッジ仕上げ方法の詳細について述べる事とします。

1. バリ無き事

“バリがあると手などに怪我をする事があるので、ヤスリで全部、取っておいてね” という意味です。  少なくとも図面がまだ青焼きだった昭和初期の頃から使われている最もスタンダードなエッジ 処理記述で、バリが無ければ、それで良いという意味も含みます。  但し、昔から記述しているからという理由で、昔のままの記述をし続けているという事もあります。  R面取りが、自動機によって出来るのであれば、例外なく“R面取りの事”と記載すべきです。

2. 糸面取りの事

“念のために、少しだけで良いから、エッジを削っておいてね” という意味です。  多くの場合は、最初は“バリ無き事”と記載していたのだけれど、それでも完全にバリが取りきれず誰かが怪我をしたので、念入りにバリを取るように指示方法を工夫した結果のようです。  他には、本当は、もっとエッジを大きく削りたいのだけれど、それでは手間が掛り過ぎるので、折衷案として小さく削ってあるものでも認めるという意味の場合もあります。  ほとんどの製品では、少しだけ面を取るという事の形状的なメリットはありません。  中途半端な感が否めない記述方法であるように思われます。

3. C面取りの事

機械加工(切削加工)においては、古くからエッジ処理の方法として、C1とかC2といったエッジ処理が記載される事がよくありました。  その影響で、C面という言い方も良く使われるので、寸法は適当でも良いので エッジを明確に削って欲しいという意味で使われているものと思われます。  機械加工屋にとっては、R面取りよりもC面取りの方が簡単だというイメージがありますのでC面取りと記載される事が多いようです。

4. R面取りの事

“エッジに丸みを付けて下さい” という意味です。   板金製品においては、昭和時代にはあまり見られなかった記述ですが、コピー機やプリンターが大量生産されるようになったために、普及した記述です。  若い方は、ご存知ないかも知れませんが、昭和や平成の前期に於いては、コピー機やプリンターは、今よりもずっと多くの紙詰まりを起こしていました。  最近は、 内部の板金部品のエッジが入念にR面取りされるようになったので紙詰まりの頻度が激減したのです。  あまり語られる事の無い内容ではありますが、コピー機やプリンターが、手間いらずとなり、安価(半額以下)になったのは、台湾や中国で生産するようになったという理由だけではなく、実は板金部品のR面取りのおかげです。  しかし、板金屋さんでR面取りを行う方法には、ハンド・グラインダー(サンダー)やヤスリなどを使った危険な方法もあり、コピー機やプリンターの性能が上がる代わりに、作業者が犠牲になってしまっているという点も重要です。