レーザ加工機のピン角
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タレパンやプレスで抜いた穴には、全てにバリ ( かえり ) が付いてしまいます。
ならば、今、流行りのレーザ加工機で切断してしまえば、バリ(かえり)は出ないのはないかと考える方も多いと思います。
現在、半数以上の板金屋さんには、レーザ加工機がありますから、もし、これでバリ問題が解決するならば、とても良い考えだという事になります。
確かに、レーザ加工機で切断した板金製品のエッジにはバリは出ません。
しかし、エッジは裏も表も綺麗な90°になりますが 『 ピン角 』 と言って、90°でも指が切れるのです。
結局は、この 『 ピン角 』 も全部、面取りをしなければならなくなるのですが、その前に、レーザ加工機は、どのようにして金属製品を切断するのでしょうか?
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SFの世界では、光線銃というのがよく登場しますが、こちらは、架空のものです。
少なくとも、拳銃のようなサイズでパワーがあるレーザ発信機は、まだ登場していません。
もし出来たら、拳銃の玉よりも、ずっと直進性が高いので、いくら遠い的にでも命中させる事ができるはずですが、今はまだ、レーザ発信機を小型化する事が出来ないのだそうです。

これを作り出すために、レーザ発振器の中には、レーザ媒質という部分があって、これには固体/液体/ガス/半導体など様々な媒質があるそうです。

レーザ切断でこれらのガスが使われる理由は、酸素ガスの場合は、金属を溶断する時に、レーザの入熱以外に酸化反応熱も溶断のエネルギーに利用できるため、溶断速度や加工限界を向上させることができます。
もっと簡単に表現すると、レーザ光線という特殊な光があります。 大きなレーザ発信装置が必要だけど、これが当たったら何でも一瞬に超高温になって気化したり液体になったりします。 溶けたら、それを直ぐに吹き飛ばす事で、何でも切れる機械を作る事ができるのです。 これがレーザ加工機です。 金属を切る場合は溶けたら、吹き飛ばさないと、また固まってしまうので固まる前に、吹き飛ばすわけです。
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レーザ加工機で溶断する時には、溶かすわけですから、鋼板側には力が加わらないので、バリが発生する余地がありません。
例えば、手術の時に使うレーザメスというのも、当たった部分は、有機物なので一瞬で気化するはずで、金属でできたメスよりもきっと痛くないはずですね。
でも、あまりにも切れ味が鮮やかなので、溶断された金属のエッジは、極めて正確な角 となってしまいます。
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レーザ加工機で溶断した時に発生するピン角によって下記のような不都合が発生します。
① 人間が怪我をする。
ピン角に手など人間の体の一部が当たると出血します。
② ケーブルなど、周囲の機器や部品が傷付く
断線やショートの原因となります。
③ 塗装の防錆効果が、著しく低下する。
別途説明します。
④ 後工程で、めっきを用いた場合、膜厚の均一性が失われる。
別途説明します。
これらを回避するために、レーザ加工機で溶断した時に発生するピン角は、R面取りする必要があります。
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コピー機に紙が詰まる
あなたの会社にもあるコピー機。
このコピー機のトラブルと言えば、紙詰まりでしょう。
10年程前までは、コピー機のメンテナンス要員は、今より沢山いて、毎日、コピー機の紙詰まりと、それから派生した修理部品の交換等を行っていました。
でも、最近は、コピー機の紙詰まりの頻度が減ったと感じませんか?
これは、コピー機内部で使われている部品のバリ取りや面取りが、入念に行われるようになったからです。
女子社員のタイツが伝線する。
バリは勿論の事、ピン角に触れても女子社員のタイツが伝線してしまいます。
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レーザ加工機で溶断した時に発生するピン角は、裏も表も両方に発生します。
せん断加工によって発生する “ ばり ( かえり ) ” は、片方だけに発生し、逆側はダレと言って丸くなります。
つまり、レーザ加工機で溶断した場合の方が、両面を処理せねばならなくなるので、面取り作業は2倍大変だ!という事になってしまいます。
タレパンやプレスで抜いた穴よりも、レーザで抜いた穴の方が、バリが無いので良いだろうと、誰もが考えがちです。
しかし、結局のところ、事実は、それとは逆です。