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脱脂洗浄の8つの種類ごとの特徴と洗浄する際の注意点について

板金加工製造場を統括する立場にある方に向け、脱脂洗浄について解説する記事です。

脱脂洗浄にはさまざまな方法があります。
洗浄剤の種類も多岐にわたり、洗浄したい対象物との相性もあるため、適切な洗浄方法を見つけられない方も少なくありません。

そこで今回の記事では、脱脂洗浄の8つの種類ごとの特徴と、洗浄を実施する際の注意点について解説します。
参考にしていただければ、自社の現場に適した洗浄方法を判断しやすくなります。

脱脂洗浄の種類

それではまず、汚れ取りの種類について見ていきましょう。
主なものは次の8つです。

①蒸気洗浄

「蒸気洗浄」は、蒸気化した溶剤で洗浄する方法です。

溶剤を加熱して蒸気にした後に、洗浄したいものに対して吹き付けます。
洗浄したい対象物は温度が低いため、蒸気は表面に付着してそのまま汚れとともに流れ、汚れを落とせる仕組みです。


「溶剤脱脂」「スチーム洗浄」「ペーパー洗浄」
とも呼ばれ、いずれも同じく蒸気化した溶剤で洗浄を行います。

②アルカリ性洗浄

「アルカリ性洗浄」とは、強アルカリ性の溶液を用いて脱脂洗浄を行う方法です。
溶液には炭酸ソーダや苛性ソーダなどが用いられます。

溶液を加熱したうえで、加工品を溶液につけることによって洗浄を実施。引火性がなく、毒性が低く、費用も抑えやすいため導入しやすく、広く利用されています。

安全性が高く費用も抑えやすいため、広く利用されています。

③ウェットブラスト法

水に洗浄剤を混合し、その水を研磨剤に噴射して汚れ取りを行う方法を「ウェットブラスト法」と言います。
水や溶剤を使って加工物表面の異物も除去できます。
脱脂洗浄と同時にバリや異物も取り除けます。

④有機溶剤洗浄

「有機溶剤洗浄」は、有機溶剤を使用する脱脂洗浄法です。

使用される有機溶剤は、塩素やフッ素などの臭素系であり、有機溶剤の持つ油脂を溶かす性質を利用します。
グリスなどが付着してしまったときに効果的です。

有機溶剤洗浄の利点は、洗浄力と乾燥性が高く、コストを抑えやすい点です。
環境への負荷が高いなどのデメリットもありますが、油脂を洗浄する際には便利な方法と言えます。

⑤炭化水素系洗浄

炭化水素系の薬剤を使用して洗浄を行うのが「炭化水素系洗浄」です。
有機溶剤洗浄と同じように、油脂を溶かす力が強いことが特徴。
さらに環境への負荷が少ないことや、金属を腐食させにくいことなどがメリットです。

ただし炭化水素系の薬剤は第4石油類であるため、消防法の規制を受けます。
防爆処理が必要となることなど、導入の手間がかかるというデメリットがあります。

ただし、有機溶剤洗浄より環境負荷が少ないなどの利点があるため、有機溶剤洗浄の代替としても活用できます。

⑥超音波洗浄

「超音波洗浄」は、超音波を照射して洗浄を行う方法のこと。
洗浄液の中に洗浄したいものを入れ、超音波を照射すると、水の振動により細かな部分の汚れも落とせます。

通常の水流だけでは落とせない汚れがあるとき、入り組んだ形状のものを洗浄したいときに役立つでしょう。
その他の洗浄方法と組み合わせることで、さらに洗浄力を高められます。

以上のように、超音波を利用することで、細部の汚れも取り除けます。

⑦酸洗浄

汚れ取りの仕上げとして用いられることが多い「酸洗浄」は、金属に用いられることが多い洗浄方法です。

仕上げに用いると、他の洗浄方法で除去しきれなかった汚れを取り除けます。
たとえばサビ・フラックス・酸化皮膜などを除去したい場合におすすめの方法です。

⑧電解洗浄

「電解洗浄」とは、通電によってガスを発生させ、汚れを取り除くことが特徴です。

電解洗浄では洗浄したいものを電極とします。
通電させると電極とした対象物の表面に水素もしくは酸素のガスが発生し、溶剤が撹拌されます。
そして溶剤の撹拌によって汚れが除去されやすくなる仕組みです。

洗浄したいものを電極とするため、対象物が金属である場合のみ利用できると考えてください。
溶剤を用いるその他の洗浄方法と組み合わせると、より高い効果が期待できるでしょう。

脱脂洗浄する際の注意点

続いては汚れ取りする際の注意点について解説します。

洗浄の効果を引き出しながらより安全に洗浄を行うには、次の3つの注意点を守りましょう。

注意点①洗浄時間と温度を適切に管理する

脱脂洗浄をする際には、時間と温度の管理を適切に行なってください。
管理が不適切であった場合、対象物に腐食や変形が起きることもあります。

洗浄のためにかかる時間と温度は、洗浄したい対象物の材質により異なるものです。
また汚れの種類や汚れの量によっても変わるでしょう。

正しい洗浄方法を知ったうえで洗浄対象物をよく確認し、時間・温度ともに適切に管理することが求められます。

注意点➁素材や汚れの種類を理解する

素材や汚れの種類を理解することも注意点のひとつ。
なぜなら素材や汚れによって、選ぶべき汚れ取り法が変わってくるためです。
これは、前述した洗浄時間と温度の適正管理にも関わります。

脱脂洗浄方法にはさまざまな種類があり、それぞれ特徴が異なります。
油脂汚れを除去したい場合もあれば、サビやスケールを除去したいと感じることもあるでしょう。
また対象物が金属であるか、樹脂素材であるかにより選ぶべき洗浄方法も変わります。

素材や汚れの種類をよく理解したうえで、最も効果的な汚れ取り法を選ぶことが大切です。

注意点③洗浄後の残留物をきちんと処理する

洗浄後は、残留物の処理を適正に行ってください。

汚れ取りをした後には、洗浄液と残留油脂が残ります。
金属に水分が残っていればサビの原因になりかねませんし、洗浄剤の成分はその後に行う塗装の密着度を低下させるでしょう。
残留油脂は製品の品質低下につながることがあるため、すべての残留物をきちんと処理することを忘れないでください。

【素材別】脱脂洗浄の注意点

汚れ取りをするには、素材別の注意点を把握しておくことも欠かせません。
3つの素材を例にあげて、それぞれの注意点について解説します。

アルミ

アルミを洗浄する際には、腐食しないよう洗浄液の濃度・温度とともに洗浄時間の管理を徹底しましょう。
後述するステンレスよりも腐食しやすい素材であるため、中性から弱アルカリ性の洗浄剤を使用することが望ましいです。

アルミ素材の製品はアルマイトで処理されることがあるため、密着力を強化するため脱脂洗浄をする機会が多いはずです。
腐食しないよう注意しながら洗浄を行ってください。

ステンレス

ステンレスの汚れ取りは、高い品質で実施しなければなりません。
なぜならステンレスの表面に油脂やスケールが残ると、ステンレスの特性を失わせてしまうことがあるためです。
また塩素系溶剤の場合は、残留塩素による腐食割れが起きることがあるため、やはり表面の成分を完全に取り除くことが必要。

一般的な洗浄方法では大きな腐食のリスクは少ないとされています。
表面処理を徹底することが特に重要です。

樹脂

樹脂の脱脂洗浄で注意すべきことは、変形と腐食です。
熱による変形が起こりやすいこと、洗浄液による腐食が起こりやすいことから、製品品質を損なうことがあります。

そのため洗浄液の種類・温度・濃度を入念に管理し、製品の品質劣化を防ぐことが注意点です。

脱脂洗浄は素材・汚れの特性にあった方法を選ぼう

いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただくことで、脱脂洗浄についてご理解いただけたと思います。
製品の品質を確保するには、素材や汚れの種類に応じて適切な方法を選ぶことが大切です。

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この記事の著者

オーセンテック株式会社 編集部

オーセンテック株式会社では、「お客様の声を「アイデア」に お客様の笑顔を「力」に「ものづくり」に貢献する会社でありたい」という企業理念のもと、製造現場の生産性向上・人手不足・品質の安定化・環境改善を実現させるため、手作業をなくすための機械(バリ取り機や板金洗浄機など)を開発・販売・メンテナンスしております。
オーセンテック編集部では、これまでの数多くのバリ取り機、洗浄機の導入事例・サポート経験を活かして、バリ取りや洗浄といった板金加工現場でなくてはならない工程・作業に関するお役立ち情報を発信しています。

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