目次
人手不足で生産計画どおりに製造できない、熟練者の退職で品質が保てるか不安、と感じる場面は少なくありません。
加えて、原材料費やエネルギー価格の負担、調達先の集中など、製造業を取り巻く環境は大きく変わっています。
課題を放置すると、納期遅延や利益率の低下につながるかもしれません。
本記事では、日本の製造業の現状とおもな課題、段階的に生産性を高める進め方を説明します。
自社が優先して取り組むテーマを整理する際の参考にしてください。
日本の製造業を取り巻く現状

日本の製造業は国内経済を支える一方で、就業者の減少や原材料・エネルギー価格の負担に対応しながら、収益を確保しなければなりません。
現状を把握すると、個別の困り事を一時的な問題として扱わず、経営課題として整理しやすくなります。
製造業の立ち位置と人材の状況、近年の公的資料に見られる動きを3つに分けて確認しましょう。
- 国内経済における製造業の位置づけ
- 就業者減少と現場の不足感
- 事業に影響が大きいのは原材料・エネルギー・労働力
詳しく解説します。
国内経済における製造業の位置づけ
製造業は国内総生産の約2割を占める基幹産業で、2024年の構成比は19.0%とドイツと同程度です。
自動車や電子部品、化学、食品など幅広い業種があり、部品供給や物流、研究開発を通じて多くの産業を支えています。
1人あたりの名目労働生産性は、2025年時点で全産業の約1.2倍です。
一方で、海外市場では価格だけでなく短納期対応や環境配慮、安定供給まで求められ、技術力や品質だけで受注を維持することは難しくなりました。
現場の改善と設備投資を進め、収益を生みやすい体制へ変えることが競争力につながります。
参考資料:経済産業省「2026年版ものづくり白書」
参考資料:内閣府「国民経済計算年次推計」
就業者減少と現場の不足感
製造業の就業者数は、2024年の1,046万人から2025年の1,033万人へ減少し、全就業者の15%程度で推移しています。
34歳以下は2025年に258万人、65歳以上は85万人で製造業の8.2%です。
中小製造業の従業員数過不足DIは、2025年にマイナス17.9と不足超が続いています。
欠員を管理者や熟練者の兼務で補うと、改善活動や教育に時間を割けず、残業や属人化が増える悪循環になりがちです。
採用だけに頼らず、作業量を減らす自動化や、経験に頼る工程の見直しをあわせて進めることが求められます。
参考資料:経済産業省「2026年版ものづくり白書」
参考資料:厚生労働省「2026年版ものづくり白書」概要
参考資料:総務省統計局「労働力調査」
参考資料:中小企業庁「中小企業景況調査」
関連記事:製造ラインの改善手順と自動化で生産性を高める方法を分かりやすく解説
事業に影響が大きいのは原材料・エネルギー・労働力
2026年版ものづくり白書によると、事業に影響する社会情勢は、原材料・資源価格の高騰が過去3年トップです。
労働力不足は回答割合が上昇し、2025年は2位です。
直近3年間に実施した企業行動では、約8割の事業者が価格転嫁と賃上げをあげています。
参考資料:経済産業省「2026年版ものづくり白書」
工場と製造現場が抱えるおもな課題
工場の課題は、人材・費用・設備・調達・情報管理が互いに影響し合うため、1つだけを改善しても成果が続かない場合があります。
自社に当てはまる問題を把握するため、現場で起こりやすい5つの課題を確認しましょう。
- 人手不足と技能継承の停滞
- 原材料費とエネルギー価格の負担
- 設備投資の目的は更新・維持が中心になりやすい
- 調達先の集中と供給リスクへの備え
- 現場情報の分断と活用の遅れ
それぞれの課題がどの工程や経営数値に影響しているかを把握すると、改善する順番を決めやすくなります。
人手不足と技能継承の停滞
製造現場では、作業者不足に加えて、技能を伝える側の人材不足が課題です。
厚生労働省の調査では、製造業で人材育成に問題があるとする事業所のうち62.8%が「指導する人材が不足している」と答えています。
ものづくり白書が引用する調査でも、技能継承の取り組みは再雇用や勤務延長により高年齢の従業員に継続勤務してもらう割合が54.8%と最多です。
採用を増やすだけでは解消しにくいため、判断基準を手順書や動画に残し、経験者と若手が一緒に作業する期間を設けましょう。
人に依存する工程を減らすほど、欠員の影響を抑えられます。
参考資料:厚生労働省「能力開発基本調査(事業所調査)」
参考資料:厚生労働省「2026年版ものづくり白書」概要
参考資料:経済産業省「2026年版ものづくり白書」
原材料費とエネルギー価格の負担
金属や樹脂、化学原料などの価格は、為替や世界的な需給の影響を受けます。
電気料金は2022年度に上昇し、2023年度は前年度より低い水準になりましたが、燃料の大半を輸入に頼るため再び上がるリスクは残ります。
対策では単に経費を削るのではなく、製品別や工程別に原価を把握することが大切です。
仕入先との交渉では、価格改定の根拠となるデータをそろえ、適切な価格転嫁を進めましょう。
あわせて使用電力を見える化し、稼働していない設備の電力削減にも取り組みます。
参考資料:資源エネルギー庁「エネルギー動向(2025年版)」第1章第4節
設備投資の目的は更新・維持が中心になりやすい
製造業の設備投資額は、2012年7-9月期以降、減価償却費を上回って推移しています。
一方、中小企業庁によると、直近5年程度に実施した設備投資の目的は「設備の更新・維持」がもっとも多く、次いで「生産能力・販売能力の強化」です。
同じ設備を使い続けるための投資が中心になりやすいのが実情です。
更新を判断するときは購入費用だけでなく、停止時間や不良率、保全費・作業者の負担まで含めて比較します。
売上の維持や省人化につながる投資から検討すると、限られた資金でも効果を見込みやすくなります。
参考資料:経済産業省・厚生労働省・文部科学省「2025年版ものづくり白書」第1章第3節
参考資料:中小企業庁「2025年版中小企業白書」第2部第2章第3節
調達先の集中と供給リスクへの備え
特定の国や企業に部品や原材料、加工を依存していると、災害や紛争・輸出規制・輸送の混乱が生じた際に、生産を続けられないおそれがあります。
代替先の品質確認や金型の準備には時間がかかり、部品が1つ不足するだけで完成品を出荷できないこともあるからです。
まずは調達先ごとの依存度を確認し、代替できない部品や材料を洗い出しましょう。
調達先を複数に分けるほか、代替材料の試験や適正な安全在庫の設定も検討します。
営業や生産、購買が同じ在庫情報を確認できれば、供給遅延時の納期調整も早められます。
現場情報の分断と活用の遅れ
生産実績や設備の稼働、品質検査、在庫などの情報を紙や表計算ソフトで個別に管理すると、全体の把握に時間がかかります。
転記や集計の手間が増え、現場の問題を管理者が知るころには対応が遅れる場合もあります。
データを集めるだけでは改善につながりません。
停止時間や不良数、納期遅延など、改善したい課題に関係する項目を決め、現場と管理部門が同じ数字を確認できるようにします。
情報がつながれば異常が起きた工程を早く特定でき、経験や勘だけに頼らずに改善案を検討できます。
中小製造業で課題が深刻になりやすい理由

中小製造業は少人数で複数の役割を担うことが多く、日々の受注対応を優先するうちに、将来に向けた投資や業務の見直しが後回しになりやすい傾向があります。
資金や人材、情報の不足は相互に影響し、課題が長期化しやすい点にも注意が必要です。
中小企業でとくに起こりやすい、以下2つの事情を整理します。
- デジタル化は進むが企業規模と工程によって差が大きい
- 価格転嫁力が大企業より弱く投資余力が削られやすい
それぞれ見ていきましょう。
デジタル化は進むが企業規模と工程によって差が大きい
ものづくり企業の約8割はデジタル技術を使った業務改善を行っている一方、行っていない企業も22.0%あります。
製造工程での活用は、従業員301人以上では6割を超えるのに対し、50人以下では3割程度です。
中小企業は、設備投資額に占めるソフトウェア投資の比率も大企業より低い水準です。
すべてを一度に変える必要はなく、転記が多い業務やミスが起きやすい業務から選びます。
導入前に処理時間や入力件数を記録して導入後と比べ、小さな範囲で成果を確認してから広げると定着しやすくなります。
参考資料:経済産業省・厚生労働省・文部科学省「2025年版ものづくり白書」第2章第3節
参考資料:中小企業庁「2025年版中小企業白書」概要
価格転嫁力が大企業より弱く投資余力が削られやすい
資料によると、中小企業の価格転嫁率は5割近くまで上昇したものの道半ばです。
製造業では中小企業の価格転嫁力が大企業より低く、1人あたり名目付加価値額の上昇率を押し下げる要因になっています。
2022年は輸入物価上昇の影響で落ち込み、2023年度に回復したと整理されています。
利益率が下がると運転資金や最低限の維持補修が優先され、自動化やDXなど将来の生産性を高める投資の余力が削られるでしょう。
工程ごとの原価と作業負担を把握し、費用対効果の高いボトルネック工程に絞って段階的に投資しましょう。
製造業の課題に対処するための進め方
人手不足や費用上昇への対応は、設備を導入するだけでは十分ではありません。
利益を圧迫している原因を数字でつかみ、優先順位を決めてから取り組むと、投資の無駄を抑えられます。
以下4つの手順を順番に進めましょう。
- 経営課題を数値で洗い出す
- 人が足りない工程から自動化する
- 調達と在庫の流れを見える化する
- 熟練者の技能を手順書に残す
一度に大きく変えず、成果を確認しながら対象を広げると、現場に負担をかけずに改善を定着させやすくなります。
経営課題を数値で洗い出す
漠然と人手が足りないと捉えるのではなく、どの工程で何時間失われているかを数値で確認します。
生産量や作業時間、停止時間・不良率・仕掛品・在庫回転率などを工程別に記録すると、負担が集中する場所を見つけやすくなります。
たとえば残業が多い工程でも、原因は前工程の遅れや部材待ちかもしれません。
数字を確認せずに設備を導入すると、期待した効果を得にくくなります。
経営者や現場責任者、作業者で同じ指標を確認し、納期・品質・費用のどれを優先するか決めましょう。
人が足りない工程から自動化する
自動化は、採用が難しい作業や繰り返しが多い作業、身体への負担が大きい作業から検討すると効果を得やすくなります。
搬送やねじ締め、箱詰め・外観検査・計量などは、条件が整えば自動化しやすい作業です。
人の判断が求められる部分を残せば、導入範囲を抑えられます。
導入前には、作業のばらつきや例外対応を洗い出しましょう。
部品の置き方や加工順が担当者ごとに異なると、機械を導入しても止まりやすくなります。
作業手順をそろえ、対象工程の稼働時間と処理量を確認してから装置の仕様を決めましょう。
関連記事:製造ラインの自動化とは?導入のメリットや自動化しない方がよい作業まで解説
調達と在庫の流れを見える化する
調達と在庫を見える化すると、欠品による生産停止と、過剰在庫による資金負担を抑えやすくなります。
受注量や生産計画、発注残・入荷予定・在庫数を同じ基準で管理し、担当者がすぐ確認できる状態を作ります。
最初から複雑な仕組みを導入するのではなく、欠品が多い部品や金額が大きい材料から対象を絞りましょう。
発注点と適正な在庫量を定め、実際の消費量に合わせて定期的に見直します。
購買や生産、営業の情報がつながれば、急な受注や納入遅延が起きても、優先する製品を早く判断できます。
熟練者の技能を手順書に残す
熟練者の技能を残すには、作業手順だけでなく、判断する場面や異常時の対応まで記録することが大切です。
加工機の設定なら数値に加えて、材料の状態に応じた調整基準や異音がしたときに確認する場所も書き残します。
作業を動画で撮影し、本人の説明を加えると、文字では伝わりにくい動きも共有できます。
手順書は作って終わりではなく、新人教育や改善活動で使いながら更新し続けるものです。
若手が迷った点を反映すれば、理解しやすい資料に変わります。
技能を個人の経験に閉じ込めず、組織全体の知識として蓄積しましょう。
日本の製造業が今も持つ強み
日本の製造業には、人手不足や設備投資の偏りといった課題がある一方で、海外企業との競争に生かせる強みもあります。
得意分野を把握し、品質や納期、技術提案で選ばれる体制を作ることが、価格競争から抜け出すことにつながります。
競争力を支える2つの強みを確認しましょう。
- 品質と現場改善に根ざした競争力
- 半導体製造装置など高付加価値の製造装置に残る強み
強みを生かしながら課題への対応を進めれば、現場の負担を減らしつつ、収益性と取引先からの信頼を高められます。
品質と現場改善に根ざした競争力
日本の製造業は、安定した品質を保つ工程管理や、現場で小さな改善を積み重ねる文化に強みがあります。
設計や調達、生産・検査が連携して不具合の原因を確認し、再発を防ぐ取り組みは、海外取引先からの信頼にもつながるでしょう。
この強みを保つには、熟練者だけに頼らず、改善の方法や品質基準を共有することが求められます。
資料では、製造プロセスのデータを取得している事業者は7割弱ある一方、活用して効果を得られた事業者は約4割にとどまると指摘しています。
現場の工夫と部門をまたいだデータ確認の組み合わせが、少ない人数でも品質と収益を維持する条件です。
参考資料:経済産業省「2026年版ものづくり白書」
参考資料:経済産業省 製造産業戦略企画室「2026年版ものづくり白書について」(2026年6月)
半導体製造装置など高付加価値の製造装置に残る強み
日本は、自動車や半導体製造装置などの高付加価値品で外貨を稼ぐ一方、その多くを化石燃料の輸入に充てています。
わずかな誤差が性能に影響する製造装置や部素材では、加工精度、耐久性、安定稼働が競争力になります。
ただし通商白書は、財輸出の世界シェア低下は機械類で大きいと整理しており、機械類全体が優位を保っているわけではありません。
部品を製造するだけでなく、設計段階から加工方法を提案できれば、取引先の開発期間短縮や品質向上にも貢献できます。
参考資料:資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2025年度版」経済性
参考資料:経済産業省「通商白書2025」第II部第3章第2節 財貿易
まとめ:製造業の課題は現状把握と負担の大きい工程からの段階的な自動化で対処する
機械で代替できる手作業から段階的に自動化していくと、人手不足の現場でも品質をそろえながら生産性を上げられます。
オーセンテックは、バリ取り機やシートメタル洗浄機、ワークロボット、シートレベラーなど、工場の手作業を効率化する機械を扱う会社です。
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カタログだけでなく、ショールームで実物のサイズ感や使用感を確認することをおすすめします。
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この記事の著者

オーセンテック株式会社
オーセンテック株式会社では、「お客様の声を「アイデア」に お客様の笑顔を「力」に「ものづくり」に貢献する会社でありたい」という企業理念のもと、製造現場の生産性向上・人手不足・品質の安定化・環境改善を実現させるため、手作業をなくすための機械(バリ取り機や板金洗浄機など)を開発・販売・メンテナンスしております。
オーセンテック編集部では、これまでの数多くのバリ取り機、洗浄機の導入事例・サポート経験を活かして、バリ取りや洗浄といった板金加工現場でなくてはならない工程・作業に関するお役立ち情報を発信しています。



