目次
面取り後にバリが出るのは、工具の摩耗や加工条件、素材の特性など複数の要因が重なるためです。本記事では、面取り バリが出る理由を工程ごとに整理し、どこを見直せば改善できるのかを分かりやすく解説します。
バリの種類や、切削条件や材質による発生の違いや工程順序や切りくず処理のポイントまで、現場で役立つ判断基準をまとめました。
図面指示の読み方や工具選定の考え方も紹介しているため、再発防止の手がかりがつかみやすくなります。面取りの精度を安定させたい方は、ぜひ参考にしてください。
面取りでバリが出る原因

面取りは、加工した部品の角を整えて扱いやすくする工程です。しかし、条件がそろわないと、作業後に小さな突起が残ることがあります。これをバリといい、仕上がりや精度に影響しやすいため注意が必要です。
バリにはいくつかの種類があり、特徴を押さえると原因の見極めがしやすくなります。
- バリ・カエリ・返りバリの違い
- 面取りで発生するバリの種類
それぞれ見ていきましょう。
バリ・カエリ・返りバリの違い
バリは種類によって発生の仕組みが異なります。まずは代表的な3種類を比較してみましょう。
【バリ3種の比較表】
| 種類 | 特徴 | 発生箇所 | 問題点 |
| バリ | 切削方向へ押し流されて
できる突起 |
加工端面・エッジ | 寸法不良や外観低下 |
| カエリ | 刃物が抜ける瞬間に
薄くめくれ上がる部分 |
裏面・出口側 | 見落としやすく
検査漏れにつながる |
| 返りバリ | カエリが固まり
厚く残る状態 |
切削面の裏側・出口側 | 組立不良や工具損傷の
原因になる |
バリは切削方向へ押し出されて残り、カエリは刃物が抜ける瞬間に裏側へ薄くめくれ上がります。返りバリは、出口側で発生したカエリがそのまま残り、厚みを持って固まった状態です。
発生の位置や形の違いを理解すると、工程のどこを見直すべきか判断しやすくなるでしょう。
面取りで発生するバリの種類
面取りで発生するバリには、いくつかの代表的な形があります。種類ごとの特徴を理解しておくと、どの工程で問題が起きているのか判断しやすくなります。
おもに見られるのは次の3種類です。
- ロールオーバーバリ:切削方向へ金属が押し流されてできる。切れ味低下や送りの不安定さで生じやすい。
- 返りバリ:工具に引きずられたカエリが、そのまま素薄くめくれ上がるように残る。出口側に出やすい。
- ポアソンバリ:工具が逃げる際に素材が圧縮されて発生する。角部や高負荷時に見られる。
バリの種類を把握すると、発生の原因や改善の方向性を見つけやすくなり、再発防止につながります。
面取りでバリが出る原因
面取りでバリが出る理由には、工具の状態とワーク側の条件が関係します。刃先の摩耗や切削条件の不一致、素材の特徴や固定の甘さなどが重なると、バリが大きくなりやすい状況が生まれます。
以下で具体的な原因を分かりやすく説明します。
- 工具摩耗と切削条件によるバリ発生
- 材質・剛性不足・ビビりによるバリ発生
それぞれ見ていきましょう。
工具摩耗と切削条件によるバリ発生
工具の状態と加工条件の不一致は、バリの増加の原因につながります。工具が摩耗すると切れ味が落ち、金属が切削方向へ押し流されやすくなります。
刃先が丸くなるほど変形が大きくなり、ロールオーバーバリが残りやすい状態に変わるでしょう。送り量が速すぎる場合は刃先への負荷が増え、軌跡が安定しにくくなります。
反対に送りが遅い条件では摩擦熱が高まり、摩耗が進みやすくなる傾向があります。切り込み量が大きい設定でも注意が必要です。工具がわずかに逃げ、エッジを引きずるような跡が出やすいため、薄いカエリの増加につながるでしょう。
さらに、回転数や切削速度が素材に合っていない場合は仕上げが乱れやすく、品質のばらつきが起こりやすくなります。
材質・剛性不足・ビビりによるバリ発生
素材そのものの性質やワークの固定状態も、バリ発生に大きく関わります。やわらかい材質は変形しやすく、面取り時に金属が伸びて薄いバリが残りやすい傾向があります。
一方で、硬度の高い材料では切削時の衝撃が大きくなり、押し流しバリと欠けが組み合わさった形状が出やすくなるのが特徴です。
素材の違いによって発生するバリの形が変わるため、材質ごとの特性を理解しておくと原因分析がしやすいでしょう。
固定が弱いとワークが微妙に揺れ、加工中にビビりが発生します。ビビりは刃先の軌跡を乱し、切削が一定にならないため、エッジ部にカエリが増えやすくなります。
また、治具の剛性不足やクランプ位置が適切でない場合にも起こりやすい現象です。 材質の性質・固定方法・機械側の剛性を合わせて確認すると、バリの原因をより正確に絞り込めるでしょう。
加工方式ごとのバリの出方
バリの出方は加工方式によって大きく変わり、切削や旋盤加工では工具の動きや切削方向が影響します。一方、射出成形やプレス加工では金型の精度や圧力条件が要因となります。
発生するバリの形状や対策が工程ごとに変わるため、方式別の特徴を押さえておくと原因の切り分けが進めやすいでしょう。
- 切削・旋盤で発生するバリの特徴
- 射出成形・プレスで発生するバリの特徴
それぞれ見ていきましょう。
切削・旋盤で発生するバリの特徴
旋盤加工では、外径と内径でバリの出方に違いが出る場合があります。切削方向へ素材が押し流れると、端部に盛り上がるようなロールオーバーバリが残りやすく、工具が抜ける側では薄いカエリが発生しがちです。
送り量が安定しない条件では切削抵抗が変動しやすく、エッジ部の変形が増えるケースも見られます。刃先の摩耗が進んだ状態では金属をきれいに切れず、押しつぶすような動きが強まり、バリの成長につながるでしょう。
旋盤加工の場合、外径と内径でバリの出方が異なります。外径加工では切削方向に沿った押し流し形状が出やすく、内径加工では薄い膜状のカエリが残りやすいのが特徴です。
工具の当て方や角度が変わるだけで結果が大きく変わるため、加工条件を定期的に見直すと原因の特定がしやすいでしょう。
射出成形・プレスで発生するバリの特徴
射出成形で見られるバリは、樹脂が金型の合わせ面へ流れ込むことで生じる膜状の突起が中心です。型の摩耗や締付力の不足があると隙間が広がり、樹脂が逃げやすい状態に変わるため、薄いバリが広い範囲に伸びる傾向があります。
温度や圧力の設定が適切でない場合も樹脂の流れが乱れ、仕上げ精度に影響する場面が多いでしょう。
プレス加工では、金属がせん断される際に素材が抜け側(ダイ側)へ引き延ばされ、カエリが残りやすくなります。クリアランスが広すぎると変形が大きくなり、反対に狭い条件では工具摩耗が進みやすい点が課題です。
型の平行度や刃先の状態がわずかに狂うだけでもバリの大きさが変わります。金型精度と圧力条件を定期的に確認し、原因の特定をしていきましょう。
バリを抑える加工条件

バリを抑えるには、加工を安定させる必要があります。面取り量や工程の流れ、切りくずの扱い方が整うだけで仕上がりは変わります。送りや回転数、工具の突き出し量も影響が大きいため、基本条件をそろえる意識が欠かせません。
- 面取り量・工程順序・切りくず処理
- 送り・回転数・工具突き出し量の調整
それぞれ見ていきましょう。
面取り量・工程順序・切りくず処理
面取り量が大きすぎると素材が押し流され、エッジに厚いバリが残りやすくなります。反対に量が小さすぎる場合は切削が安定しにくく、均一な面取りが得られないため、適正値を見極めることが欠かせません。
バリを抑えるためには、工程順序も重要です。負荷の大きい加工を先に行うと、後工程でバリが再発してしまいます。切りくず処理が不十分な状態では刃先にくずが絡み、エッジを引きずる動きが増えるため、薄いカエリが残る原因となるでしょう。
工程順序の一例は次のとおりです。
- 荒加工
- 穴あけ加工
- 面取り加工(必要に応じて複数回)
- 仕上げ加工
切りくずの排出が安定すると刃先の負荷が均一になり、バリ抑制に直結するので注意が必要です。
送り・回転数・工具突き出し量の調整
送り量が過大な条件では切削抵抗が急激に変動し、エッジ部の変形が大きくなる傾向があります。反対に送りが小さすぎる場合は摩擦熱が増え、刃先の摩耗が早まるため、素材に合った適正値が必要です。
回転数も同様で、高すぎると熱の蓄積につながり、低すぎる条件では切削が荒れてバリが増えやすい状態に変わります。工具の突き出し量が長いとたわみが発生しやすく、切削軌跡が乱れることでカエリの増加を招く点にも注意が必要です。
条件を見直す際は、送り、回転数、突き出し量のバランスを崩さない設定を検討すると、バリの抑制につながるでしょう。
バリ取りと工具・図面指示の基礎
バリ取りの方法や、図面で指定される基準を押さえておくと、仕上げのばらつきを防げます。手作業で使う工具の考え方や、C面・バリ高さの指示は加工の判断材料となるため、理解しておきましょう。
- バリ取り手作業と工具選定
- JIS指示・C面指示・バリ高さ基準
それぞれ見ていきましょう。
バリ取り手作業と工具選定
バリ取りを手作業で行う場合は、「どの工具をどのような場面で使うか」を判断できると仕上がりが安定します。手作業は細かな調整がしやすい一方で、力の入れ方や角度が一定になりづらく、品質のばらつきにつながりやすい工程です。
そのため、作業前に素材の硬さや面取り量を把握し、適した工具を選ぶ流れが欠かせません。たとえば、アルミのように柔らかい素材なら刃あたりの軽い工具が扱いやすく、ステンレスのように硬い素材ではコシのある工具が向いています。
平ヤスリやダイヤモンドバー、ワイヤーブラシなど、素材に合う工具を選ぶと仕上がりの安定に直結するでしょう。
JIS指示・C面指示・バリ高さ基準
図面では、面取り量やバリ取りの基準が示されており、内容を理解しておくと加工側との認識差を防げます。
表記は、JIS B 0001(製図通則)の考え方に沿った書き方が一般的です。面取りは「C0.2」のように示し、バリ高さは「0.1以下」と数値で指示されます。
【図面で使われる代表的なバリ・面取り指示】
| 項目 | 図面での指示例 | 意味・内容 | よくある注意点 |
| JISバリ取り指示 | バリ取り | 危険なバリを除去する
一般指示 |
基準が曖昧な場合があり |
| C面指示
(面取り) |
C0.2、C0.5 など | 角を指定値で面取りする加工 | 過剰除去に注意が必要 |
| バリ高さ基準 | 0.1以下 など | バリの最大高さを
数値で規定する |
測定差が出やすい点に注意 |
図面の意図を正しくつかむと、仕上げ不足や加工ミスによる手戻りを防ぎやすくなります。
まとめ
面取りで発生するバリは、工具の摩耗や加工条件、素材の性質など複数の要因が重なって生じます。工程の組み方や機械設定が少し変わるだけでも形や量が変化するため、正しい原因の特定が欠かせません。
条件の見直しや工具選定、図面指示の理解は、どれもバリを抑えるための基本であり、仕上がりの安定にもつながります。
しかし、自社の条件で何を優先すべきか迷う場面もあるでしょう。そのようなときは、バリ取り装置を扱うオーセンテック株式会社にお任せください。
加工内容に合わせた工具や面取り装置の提案に加え、工程設計の相談や技術資料の提供にも対応しており、最適な改善方法を提案いたします。
現場に合った解決策を効率よく見つけたい場合は、オーセンテック株式会社のサポートを活用してみてはいかがでしょうか。
-
お電話でのお問い合わせ
-
メールでのお問い合わせ
この記事の著者

オーセンテック株式会社
オーセンテック株式会社では、「お客様の声を「アイデア」に お客様の笑顔を「力」に「ものづくり」に貢献する会社でありたい」という企業理念のもと、製造現場の生産性向上・人手不足・品質の安定化・環境改善を実現させるため、手作業をなくすための機械(バリ取り機や板金洗浄機など)を開発・販売・メンテナンスしております。
オーセンテック編集部では、これまでの数多くのバリ取り機、洗浄機の導入事例・サポート経験を活かして、バリ取りや洗浄といった板金加工現場でなくてはならない工程・作業に関するお役立ち情報を発信しています。



