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製品含有化学物質調査


製品含有化学物質調査

板金屋における製品含有化学物質調査の対応について

製品含有化学物質情報の考え方と作成方法

板金製造業の皆さんの中には、顧客から、製造した板金部品に関する、以下にリストしたような書類を提出するように言われて困ったご経験がある方がいらっしゃるのではないでしょうか?

  • RoHs(ローズ)非含有証明書
  • REACH(リーチ)非含有証明書
  • 紛争鉱物非含有証明書
  • 材料証明書(ミルシート)
  • MSDS(エムエスディーエス)
  • MSDSplus(エムエスディーエス・プラス)
  • AISデータ
  • 成分表

このページでは、これらの意味や関連性を述べます。 できる限り費用を掛けずに、製品含有化学物質調査書類やデータを用意する方法をまとめたいと思います。

製品含有化学物質調査書類提出に対応するためには、本来ならば、「自分の工場から出荷された製品の化学的な成分を正確に知っておく必要がある」という事が大事です。

成分が明らかになっていない場合は何度も同じような内容の調査に対応し、その場、その場で証明書類を作成する事にもなりかねません。

10人~30人規模の板金工場の場合、これらの書類を作成できる人を新たに雇い入れる必要が出てくる場合すらもあります。これからの板金屋は、板金加工を行っているだけでは飯が食えなくなる可能性があるのです。

使用部品がある場合は、供給会社に依頼する必要があります

板金製品に、ねじ類など他社から購入した部品が付いている場合は、その会社に必要なデータを要求する事になります。 1つの板金製品に何種類もの構成部品がある場合は全てに関する情報を揃えねばなりません。

また、めっきなどを使用している場合も、めっき屋に対して、めっき成分やめっき重量を明らかにしてもらう必要があります。

成分表(組成データ)

一連の書類の中で、一番作成困難なのが成分表です。実際は、ほとんどの板金屋さんで作成する事は難しいと思います。 でも、考え方から言うと、これが基本となるので、あえて最初に説明します。

製品が、どのような元素(化学の時間に習った、水素、ヘリウム…等です。)で構成されているかを示すもので、元素毎にCAS番号という番号が決められており、これが製品の全体重量に対して、どれだけ含まれているかを示すものです。

CAS番号は、元素が解っていればネットで簡単に調べる事が出来ます。 成分表は、全ての証明書類の根拠となるデータです。

例えば、RoHs非含有証明書を発行する場合、RoHs禁止物質が、成分(成分表)に含まれていない事を確認する事で、 RoHs非含有証明書が発行できるわけです。

成分表(組成データ)の作成には、基本的に2つの方法があります。

 

製鉄所から提示されている材料データや、めっき屋からのめっき成分データを使って机上で計算する方法。

筆者の経験では、この方法が現実的です。但し、若干の化学的知識や、EXCEL等を使った簡単な工学演算が出来なければ、弁理士などに依頼する他はないものと思われます。

“EXCEL等を使った簡単な工学演算"の内容を具体的に述べますと、例えば、めっき厚を考慮し、製品表面に付着した“おおよその"めっきの重量を算出し、めっきの各成分が、製品全体に対して何PPMとなっているか等を計算する必要があります。この説明を理解する事が難しい場合は、迷わず、弁理士等に相談すべきでしょう。

実際に製品を粉砕し、成分分析を行う方法。

産業試験場等に依頼する方法がポピュラーですが、1件当たり5~15万円の費用が発生します。成分分析を行ったロットに関しては「確かなデータ」という事になりますが、普通は、ロット毎に成分分析を行う事は出来ません。

ロットが異なれば成分も変化しますので、やはり、推測の域を脱する事はないデータです。

また、めっきを使用している場合は、かなり複雑になります。めっき屋さんに対して、めっき成分やめっき重量を明らかにしてもらう必要があります。

電気亜鉛めっきであれば、以下のような情報を提供してもらう事になります。

Zinc-plated
成分名 CAS番号 含有率
Zinc(metal) 7440-66-6 99.9500%
Carbon 7440-44-0 0.0440%
Nitrogen 7727-37-9 0.0002%
Chlorine 7782-50-5 0.0058%

 

しかし、そうなると筆者の経験では半数のめっき屋さんは対応できないというのが実情かと思います。 重量は膜厚と製品の3次元形状を使って体積計算を行い、比重から重量計算を行わねばなりません。

多くの板金屋さんでは“とても無理"といった感じです。

大手企業では、これらを下請けに任せる事は出来ないので、必要な最低情報のみを要求し、実際の成分表は自分達で作成するというケースもあるようです。

何故、このような面倒な情報を要求されるようになって来たのか

海外製の製品等では、日本国内では考えられないような粗悪な材料を使った機械部品が存在します。

例えば、アジア諸国でステンレス製品を購入した場合などには日本ではありえないような成分の ステンレスが供給されている場合が多々あると聞いています。

安価な商品を得ようとした時、このような粗悪な材料を使った部品が紛れ込む場合もあり、品質面の保証を行うためには製品に使用する全ての部品の成分を把握する必要があるわけです。

製品が土に帰る時(RoHs非含有証明書 REACH非含有証明書)

RoHsやREACHでは、工業製品に含まれてはいけない毒性のある物質が指定されています。

RoHs非含有証明書やREACH非含有証明書は、将来、製品が土に帰る時のために、製品に環境破壊に繋がる毒物が含まれていない事を証明するものです。

物質によっては製品製造のために若干ならば許されているものもあります。

製品のRoHs非含有証明書やREACH非含有証明書は、普通は各社独自の書式でOKの場合がほとんどです。

金属製品の場合、禁止物質が含まれる可能性が低い事から製造元によってはネットでダウンロード出来る場合も多々あります。これらを提出するように言われた場合は比較的楽に対応する事ができます。

本来は成分表があってこそのRoHs非含有証明書やREACH非含有証明書です。

実際のところは、加工工程等から考えて禁止物質が含まれる事は考えられないという考え方から、何処の会社でもEasyに作成しておられるようです。

ミルシート(材料証明)鉄工所もしくは材料屋のHPからダウンロード出来る

鉄、ステンレス、アルミなど工業製品の材料は、鉄工所もしくは材料屋のHPなどから、どのような元素がどんな割合で含まれているかを示した書類が用意されています。製品に含まれる物質のほとんどは、材料ですから、その組成は非常に重要なデータとなります。

化学物質の危険有害性情報を記載した文書(MSDS)めっき屋、塗装屋に言えばもらえる。

「化学物質等安全データシート」のMaterial Safety Data Sheetの頭文字をとったもので、事業者が化学物質及び化学物質を含んだ製品を他の事業者に譲渡・提供する際に交付する化学物質の危険有害性情報を記載した文書のことです。 MSDSは、本来、薬品を対象としたもので、

  • 目に入ったらどの様に洗うか
  • 間違って飲んだらどうするべきか

などが10ページくらいに渡って記載されています。

板金屋が液体を出荷する事は極めて稀ですので、板金製品にMSDSが求められる場合、めっき液や塗装に関するものくらいしか考えられません。

その場合は、めっき屋や塗装屋に求めれば、使用していている液のメーカーからMSDSを 取り寄せてもらえます。 普通は、「この製品のめっきに使用しているめっき液のMSDSを用意して下さい」などと言えば取り寄せてもらえます。

しかし、筆者の経験では板金製品に関するMSDSを求められた場合、 結果的に材料証明を提出する事が大半です。

MSDSplus

MSDSとMSDSplusは大きく異なります。

MSDSplusは、JAMPが推奨する製品含有化学物質情報を伝達するための基本的な情報伝達シートです。

ここで大切な事は、MSDSplusは紙では無く、データだという事です。JAMPのホームページからExcelシートをダウンロードして、これにキーボードで記入します。

シート内のボタンをクリックして.xmlという拡張子のファイルを作成し、Mail等に添付して顧客に送るものです。成分は、鉄は鉄を選択するのみでOK。めっきも、めっきの種類を選択するだけでOK。

重量等の入力は必要無く、RoHsやREACHの禁止物質を含む豪華版の禁止物質管理シートといったところです。といっても、板金屋さんの場合、コンピュータの操作に慣れていなければ、作成は、ほとんど無理と言っても過言ではないでしょう。

また、入力していて意味が解らなければ、どうにもならないので、少しは化学の知識も必要です。 少々の化学の知識と少々のコンピュータの知識が同時に必要です。

製品に含まれる鉱物がテロや戦争で使用される事の無いように(紛争鉱物非含有証明書)

各社独自の書式でもOKの場合もあります。この場合、RoHsやREACHの非含有証明書と、ほとんど同じ作成方法でかまいません。これをデジタル化したのが、Conflict Minerals Reporting Template (CMRT) のシートです。

こちらは工場から出荷される製品の全てに関する宣言書のようなものとなっています。

独自形式であれば簡単に作成できますが、CMRTだと、コンピュータ操作に慣れていなければ作成は難しいかも知れません。

急増してきたAISデータ

AISデータはJAMPが推奨する製品含有化学物質情報を伝達するためのExcelシートを使って作成します。成形品の「質量」「部位」「材質」「管理対象法規に該当する物質の含有有無・物質名・含有量・ 成形品当たりの濃度」などの情報を入力します。

Excelシートの中にボタンがあって.xml形式でデータを作成できるようになっています。普通は、このデータをMailに添付して依頼者に送信する事になります。

但し、Excelシートに記入する前に製品の重量や材質などが解っていないと入力する事は出来ません。

基本的には、成分表を参照しながら入力するといったところです。 データを受け取った側では、多数の部品調達先から同等のデータをもらっています。 部品構成に従い、それらを1つにまとめて管理するにはAISデータを収集するという方法が合理的なので、AISデータが多用されています。

結構アバウトでもかまわない

まるでJAMPの回し者のような事ばかり書いてきましたが、 ここまで読んで頂いた方への、お礼を兼ねて、何処までアバウトで良いかを述べます。

まず、RoHsなどの非含有証明に関しては、あくまで自己責任ですが、普通の板金製品であれば、まず含まれる事はないはずです。何処かの非含有証明書のマネをして、 テンプラで、相手先社名と、調査対象の製品名等を記載して提出する事も出来ると思います。

多くの場合、RoHsとREACHと紛争鉱物の非含有証明は、この方法で作成できるはずです。

問題はExcelシートを使った、MSDSplusとAISとConflict Mineralsです。これは、コンピュータに慣れていなければ作成は難しいはずです。 “そんな人はいないよ"という場合は、

「RoHsとREACHと紛争鉱物の非含有証明ならば提出できますが、ダメですか?」

「鉄工所からもらった材料証明もありますが、ダメですか?」

と聞けば、大体の顧客は、ここまでしか出来ない会社は沢山あるので、認めざるを得ない場合が多いのです。

多少のコンピュータの知識等がある場合で、成分表を作成しようとする場合、データの数値(成分比率等)は、おおよそのデータでかまわないはずです。

そもそも、めっき厚等は一定であるはずもなく、塗装膜も一定ではありません。形状は3次元形状で複雑過ぎます。最初から正確な成分表を作る事は不可能なのです。

そこで、まず、製品に使用している材料の鉄工所発行の材料証明(ミルシート)を用意し、材料部分の成分比率を求めておきます。

全体重量は平均重量とし3つも測って平均値を求めます。めっきや塗装重量などは、おおよその表面積×めっきや塗装の厚み めっきや塗装成分の一番多い成分の比重を使って、めっき重量を算出 総合計が、先ほどの平均重量になるように、Excelなどで計算。複雑な部品構成であればあるほど、難しくなってしまいます。

そんな場合は、同じ材質の部品を、まとめてしまう事も出来ます。顧客からは、普通は文句は出ないと思います。

ここの部分は、凄く大切です。

作成が簡単な順に並べると、このようになります。

 

少しの手間で何処でも作成可能 RoHs(ローズ)非含有証明書
REACH(リーチ)非含有証明書
紛争鉱物非含有証明書
禁止物質が含まれていない場合は、自分の会社で簡単に作成可能。
材料証明書(ミルシート) 材料屋から取り寄せる。
MSDS(エムエスディーエス) 塗装屋、めっき屋から取り寄せる事が出来る。
対応できない塗装屋、めっき屋も多い。
MSDSと材料証明書の勘違いが多い。
知識が必要 MSDSplus(エムエスディーエス・プラス) コンピュータの知識と化学の知識が必要。
AISデータ コンピュータの知識と化学の知識が必要なうえ、重量データも必要。最近、増加傾向。
成分表 作成は難しいが、内容的にオールマイティー。トラブル発生時には成分分析を要求されることも考えられる。実力のある会社は、作成準備を進めるべき。

オオム返しの顧客

大手の顧客ほど、製品含有化学物質情報の提示を求める事が増加して来ています。この事は、板金製造業にとっては、大事な顧客であればあるほど製品含有化学物質情報をしっかり提示せねばならないという事になります。

しかし、直接の納品先の担当者は、そういった知識が無い場合がほとんどで、製品含有化学物質情報の意味などは解らず、オオム返しに“××を添付の事"などと指示するだけです。

そこで、勘違いやコミュニケーションギャップが発生し、何度も、同じような書類を提出させられる事になる場合もあります。

無料で良いのだろうか?

一番困るのは、顧客にしてみれば書類や情報が無料で提供されるために 無制限に要求するケースがあるという事です。 RoHsとREACHと紛争鉱物の非含有証明は、簡単に作成できるので無料でも良いと思います。

しかし、MSDSplus/AISデータ/成分表 に関しては、有料にすべきデータであるように思います。これらは、最終ユーザでは、大量の部品データを管理するために必要なデータの作成を下請け会社に無料で押し付けているという要素があるからです。

将来は、もっと厳しくなる

製品含有化学物質情報の提供の義務は時代の流れから考えて、将来、より厳しいものとなるはずです。

RoHsやREACHの禁止物質は、どんどん増加する事になり、RoHsやREACH以外の新たな禁止物質リストも登場するはずです。

将来、何らかの物質が含まれていた事によって発生した事故が起これば、その度に、厳しい規制が登場するはずです。

結局のところ、製品の成分表、もしくは、それに匹敵する情報がなければ、 どんどん対応に手間と時間がかかるようになってゆくものと思われます。

避けて通る事は出来ないものか?

逆説的に言えば、将来、製品の化学的な成分が正確に解らないような製品は、間違いなく販売出来なくなるはずです。

避けて通る事は、不可能だと思われるので、このページを作成させて頂いたのです。上記の内容は、その気になって取り組めば、さほど難しい内容ではないはず。これらに対する備え=勉強を怠る事は許されないはずです。

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