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技術者が考察した「バリ取りのメカニズム」
たかがバリ取りではありません


1.はじめに

板金工場において、AuDeBuを含む研磨ブラシを用いたバリ取り機は、近年、普及の一途にあります。 この種のバリ取り機は、回転ブラシに付いたサンドペーパーを、製品に擦(こす)りつける、もしくは叩く といった方法で、バリを除去するものです。 しかし、現場では、製品の形状が様々である上、バリ取り機内での製品の配置も様々な状況となるのが実状です。

バリとブラシの関係、すなわち、 擦(こす)る方向とバリの存在する製品のエッジは、多くの場合平行にはなりません。 この事に大きな影響を受け、当然仕上がりが悪くなる筈ですが、しかし、実際には問題無く仕上がります。 それは、不均一にブラシが当たっても何らかのかたちで上手く研磨しているからであり、 機械のバリ取りメカニズムは手作業からの発想とは異なる可能性が高いものと考えられます。

そのメカニズムを探る前に、手作業と機械のバリ取りを比較します。

下図のようにサンドペーパーでエッジ部を2,3回擦(こす)れば、 R面取りが出来ます。平坦な表面を擦ってみると、たちまち深い擦り傷が付きます。

研磨ブラシが回転するバリ取り機の数回の擦りでは、 エッジ部の面取りは出来ません。深い擦り傷も付きません。 その違いはサンドペーパーの片側がフリーの為、ほとんど摩擦力が無いからです

サンドペーパーが擦(こす)ってバリを取るという考えに立てば、 製品のあらゆる方向に存在するバリを除去するには、 “研磨ブラシ面が平均的にどの方向にも擦らなければいけない”と言う固定観念が生まれます。 しかし、AuDeBuのようにサンドペーパーのブラシが回転してバリを除去する機械は、 手作業の概念とは違うように思えます。

2.作業深さと研磨軌跡

サンドペーパーのブラシが回転してエッジの面取りする研磨ブラシは、製品の表面より深く設定します。 その作業深さを8mm(標準)にした時のブラシ片単体の研磨開始から終了するまでの軌跡を描く と下図のようになります。研磨ブラシの半径を150mmで計算すると、製品上を走っている研磨長さ は96.7mmです。この一回の研磨軌跡を擦動(しゅうどう)モデルとして、バリ取りのメカニズムを探っていきます。 スピンドル軸の回転数が1000rpmならば、1回転は60ms、ブラシ1片の研磨時間は6.3msの非常に短い時間になります。

3.何故、エッジやバリに研磨が集中するのか

この擦動(しゅうどう)モデルが製品上を擦(こす)って走り抜けるまで時系列で見ると、最初にブラシが製品に衝突して 研磨します。衝突する時のエネルギーは、ブラシ片1個の重さ×スピンドル回転速度の2乗に比例します。 衝突時間は非常に短く『ブラシが製品を叩く』と言った方が適当かも知れません。 叩いた後は、ブラシが擦(こす)れて研磨されますが、ブラシを押し付ける力は、 スピンドル回転の遠心力です。叩いている時も擦っている時も、 ブラシ片は軽く軟らかいので、擦動モデルのサンディング部位の研磨力は非常に小さくなるでしょう。 研磨状態の力の状態をイメージすると、下図のようになります。

又、衝突部位のエネルギーが平坦な平面部に衝突する時は、ほぼ部位の大きさ(8×4=32m㎡)に分布します。 一方、衝突した位置が製品の端であった場合は、端のエッジ部の幅(0.2mm)×ブラシの幅で0.8 m㎡と推測すれば 研磨力は、平面部の40倍になる計算です。又、衝突した場所が鋭利なバリである程、バリに力が集中します。 『バリやエッジ部に研磨が集中し、平面は研磨しない』バリ取り機特有の特性はそこにあると思います。 『バリは擦って取っているのではなく、叩いて取っている』と考えます。 叩いた衝撃力による面取りでは、エッジ部の方向がまちまちでもブラシ片は軟らかく、 衝突部位が図のように柔軟に曲がるのでエッジの方向に対し、必ずしも直角に擦る必要はありません。

4.見えない『捩じれ(ねじれ)』と『揺動(しゅうどう)』

何故、仕上がりに差が現れないのでしょうか。次に擦動モデルを旋回させて詳細に観察します。 図に示す、ブラシ軸自転による速度成分は、製品との摩擦により生じる力で、製品とブラシが接触しないと発生しません。 この速度成分により旋回方向から離れる前方では外の方向に、後方では内の方向に力が働き、スピンドル軸を中心の左右に、 見えない『捩れ(ねじれ)』が発生します。

この『捩れ』は、ブラシの作業深さがゼロの場合は発生しませんが、作業深さを有していれば、 旋回動作をすることにより、どの機械でも発生します。

実際のバリ取りで10秒間の研磨で0.2Rの面取りが出来た場合、この擦動モデルが、研磨する回数は、 10000(ms)/6.3(ms)=1587回となります。製品のエッジ位置は移動するが、擦動モデルは次々と繰り返し、 このエッジ位置を研磨する。ブラシ片1回の研磨で0.00013Rとなる計算です

次に、研磨したブラシ片が1回転して2回目の研磨する状態を下図に示します。 ブラシが1回転した時間60msの間に進む角度は5.77度になります。その時の円筒ブラシ外側と内側の ブラシ片の擦動モデルは以下のようになります。 この図から、スピンドル軸真下ではブラシ片の幅で円を描きますが、擦動モデルの開始又は終了位置では 約4mmの揺れ(ローリング)が発生していることが判ります。(◎箇所)『ブラシの捩れ』は、連続的な動きで 揺動につながります。このローリング現象は全円周に渡りますので全方角に有効に働きます。 バリ取り仕上げに遜色の無い、この隠れた機能を弊社ではスモール・ローリングと呼んでいます。 ブラシの1つ1つが小刻みに揺れながら回転する様子は、まるでフラダンスのようです。

5. あとがき

多くの技術者がバリ取り機の導入を検討する場合の着眼点となる、 バリ取りのメカニズムを、擦動モデルにして説明してきましたが、 バリ取り機構を検討する際の指針となってくれる事を望むものです。 しかしながらバリ取りのメカニズムは奥が深いです。たかがバリ取り機ではありません。

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